自然発生に依存していた時代のむつ湾の生産は、 激しい変動の繰り返しでありました。 この変動をなくし、安定した高度の生産を確保することが、 関係者の長い間の念願でした。 これには、永年にわたる山本護太郎先生をはじめ、 県水産増殖センターや多くの研究者また関係漁業者の不断の努力により、1.採苗、中間育成技術の開発による種苗の量産化
2.養殖技術開発による垂下養殖の普及
等により、計画生産ができるようになり、 飛躍的に生産が増加するに至りました。 また、昭和50年には大量異常へい死が起こり3年間にわたって 生産が減少しましたが、養殖時における収容量と管理の適正化をはかる 技術的対応によってへい死を克服し再び生産の増加をみています。
ホタテ貝は、産卵後浮遊し、春の桜の開花後、物に付着します。 この習性を利用して、付着器(採苗器)を作って海中に入れ、 これに付着した稚貝を夏の落下前に採取することを採苗と呼んでいます。 この採苗の良否が、その後の生産の大小を決定づけるのです。近年の全国的なホタテ貝の生産の増大はこの種苗の量産化の成功がもたらしたといえます。 むつ湾における採苗状況は、かなりの変動がありますが、 数億粒もしくは10億粒台の採苗数量となっており、 県外へも相当数量の供給が行われています。
中間育成
採苗器に付着した稚貝は、そのままにしておくと、 夏季に8〜10mmの大きさになって海底に落下して行きますが、 これを落下させずに採取して、籠(パールネット)に入れて 3cmくらいの大きさまで育て、地まき向け、垂下養殖向けの 種苗として利用しています。
地まき放流=増殖
中間育成により3cmくらいに育った稚貝をヒトデなどの害敵を駆除した漁場に 適正な密度(1平方メートル当たり6個以内)で放流し、 2年以上たってから漁獲します。むつ湾の漁場は水深約30mまでで、地まき放流適地はおよそ23000ヘクタールあり、 各漁協では漁場を3区以上に区分して、 成貝を漁獲した後に稚貝を放流する輪採方式で利用しています。
地まき放流貝の漁獲は、殆どの漁協では、共同事業の形式により桁網 (八尺ともいいます)を漁船がロープで海底を引張って貝を採取します。 毎日漁獲する貝の量は漁協で定めて計画的に行われます。 放流数に対する回収(成貝)は漁場等によって相違しますが、 40〜60%程度です。
養殖
ホタテ貝は、海中で生活するのが自然ですが、 これを海中の施設(籠に入れるか、吊り下げるか)で育てるのが垂下養殖です。垂下養殖は、昭和37、38年頃からはじめられ、施設、方法に色々改良が加えられ 今日に至っていますが、この養殖方法が開発されて以来、漁場が県内外とも大幅に 拡大され、生産の飛躍的な増大がみられるようになりました。
むつ湾の養殖方法は上図のように、延縄(はえなわ)式施設に吊り下げられた 化繊製の網で作られた籠(丸籠もしくはアンドン籠と呼ばれ、主に10段に 仕切られています)に、ホタテ貝を入れて育てる方法とホタテ貝の貝殻に 穴をあけテグスで吊り下げる耳吊りの二方法があります。養殖漁場(区画漁業権漁場)は、岸からおよそ5,000〜6,000mまでで、 その面積は約50,000ヘクタールとなっています。